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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)215号 判決 1949年7月16日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人小林武夫の上告趣意について。

原判決はその理由中「被告人松野庫太は同候補者に當選を得させる目的で同候補者の爲投票と運動をすることの報酬及び費用並びに他の選擧人又は選擧運動者に同一趣旨の下に供與させる資金として」金一萬五千圓を被告人上野尚義と相被告人田村勉両者に供與した(第一の事実)、そして右両者は右松野庫太から右の趣旨の下に供與せられるものであることを諒承しながら前記一萬五千圓の供與を受けた(第二の事実)事実を認定判示している、その趣旨は右一萬五千圓中には他の選擧人又は選擧運動者え供與すべき金員は含んでいるけれども、右金員移転の時にはその中どれだけを被告人等に供與し又どれだけが被告人等から他の選擧人又は選擧運動者え供與せしめるかを明にせず全部被告人等の裁量に委せる趣旨の下に授受されたものと認定したのである。してみれば一應は右一萬五千圓の金額につき被告人等の所得に歸せしむる意圖の下に金員が授與されたのであるから被告人並に田村を右全金額につき受供與罪で處罰したのは正當である。論旨引用の大審院判例は投票買收の爲金員の交付を受けた者が更にその金員を選擧人に供與した場合に交付を受けた罪が供與罪に吸收されるか否かの關係であって、本件の場合に適切でないことは判文理由から明である。論旨は理由がない。

よって刑訴施行法第二條、舊刑訴法第四四六條に則り主文の通り判決する。

この判決は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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